前回は、「コロナ禍の予測困難な社会で子供を育てるために必要なこと」をテーマにして、私の体験をもとに、子供を自ら学び続けるようにすることが大切なことをお話ししました。
でも、子供は勉強したがりませんよね。
勉強が大切なことは、家でも、学校でも、さんざん言われているはずです。
それでも、勉強しないのはなぜでしょう。
今回は、その理由について一緒に考えてみましょう。
子供はどんな時に物事をやる気になるでしょう?
やらない理由を考える前に、反対のことを考えてみましょう。
勉強でなくともいいです。
自分が子供の時、物事をやる気になったときのことを思い出してみてください。
小学生くらいまで
小学校低学年のころ、先生から「はなまる」のスタンプをもらったことはありませんか?
「はなまる」をもらうとうれしくて、やる気になりませんでしたか?
また、お菓子をもらって、やる気を出したことはありませんか?
過去に、スポーツ少年団のお手伝いをしていました。
見ていると、小学生くらいまでは、
「ご褒美」があると、やる気になる子供が多いですね。
思い浮かべれば、自分も小学生の頃は、そんな感じでした。
中学生以降
これも、スポーツ少年団の手伝いをして、
気がついたことです。
だんだん大きくなると、お菓子ではつられない子供が多くなります。
むしろ、ライバルや異性の友達を意識して、
他者に認められたいと思う気持ちが、
やる気を起こさせていました。
高校生以降
高校生は、体の面でも気持ちの面でも、大人の入り口にいます。
世の中のことや大人を批判しはじめます。
その頃の自分を思い出してください。
実は、世の中のことや、大人に文句を言っている裏に、
世の中や大人に認められたいという気持ちがありませんでしたか?
家族以外の大人に認められた時、
やる気が出てきた経験あったと思います。
勉強を自分にメリットがあると感じると、子どもはやる気になる。
小学生から高校生までのことを振り返ってみましたが、共通することが1つあります。
気が付かれましたか?
きっかけはともあれ、「自分にとってメリットがある」、あるいは、「自分と関係が深い」と感じることが共通していました。
逆を言えば、やる気にならないのは、自分にとってメリットがない、自分に関係がないと感じたときに起こるようです。
ですから、自ら学ぶようにするには、子どもに勉強をするメリットや勉強が自分に関係があることを感じさせることが大切だと思います。
なぜ、学校の勉強が自分に関係ないと思うのか?
みなさんは、「将来の自分のために、勉強が大切なことは、何度も言っているよ」とおっしゃられるでしょう。
でも、子どもたちは、勉強が自分にとって必要とは思いませんよね。
なぜでしょう
自分の将来がどんな社会かイメージできない。
今度は、社会の様子に目を向けていましょう。
政府の発表でも企業のCMでも、これからの社会を言うのに、「イノベーション」、「Society 5.0」、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」などの言葉が飛び交います。
やたらと、わかりにくいカタカナや英語の用語を使っています。
あなたは、これらの言葉の意味を子供に説明できますか?
仮にできたとしても、インターネット上の辞書に書いてあるような無味乾燥な説明ではないでしょうか。
これらの言葉の示す意味を、子供が将来に希望を持てるように説明できる人は限られた人だと思います。
これらのわかりにくいカタカナや英語の用語によって、社会の出来事と自分との関係が見えにくくなっていると思います。
大人の私たちでさえ、わかりにくいのですから
子どもたちが今の社会の動きが自分に関係があると思えないでしょう。
これでは、「いくら将来のために勉強が必要だ」と大人が言っても、子供には通じません。
自分の将来がどんな社会かイメージできなければ、自分にとって何が必要か、特に学校での勉強が必要とは感じられないでしょう。
計算、測る、考えるなどの基本的なことをしなくても、日々の生活ができる。
今度は、日々の私たちの生活に目を向けてみましょう。
私たちは、カードをタッチするだけで買い物の決済ができます。
買い物するのに、お金を数える必要もないし、お釣りを確かめることも必要ありません。
昔、算数で、お買い物したときのお釣りを求める問題を解きませんでしたか?
今では、「計算」する必要性が崩れてしまっていて、算数の問題そのものが成り立ちません。
のみもの・ごはん・お弁当の温めに、電子レンジは便利ですね。
今では、安価な電子レンジにも自動メニューが付いています。
食べ物を入れて、メニューボタンを押すだけ。
簡単に食事を済ませる程度であれば、調理のための「時間」や「量」を意識する必要がありません。
体調を疑うとき、顔色の確認と熱を測りますよね。
コロナ禍のために、最近は体温を測ることが多くなりました。
非接触の体温計を相手のおでこに向ける。
あるいは、カメラに顔を向けるだけで、体温が数値で出ます。
以前のように、額に手をあてるなどして、体温を皮膚感覚で確かめることがなくなりました。
機械の調子を見るように健康が数値で表され、「からだ」に関心を持つ機会がなくなっています。
以前は、空を見上げて、雲の様子から雨が降りそうかどうか判断していましたよね。
今は、スマホやパソコンの雨雲レーダーを見れば、自分が今いる場所で、何分後に雨が降るのか、あるいは、降っている雨が何分後に止むのかわかります。
もう、スマホ等を見ればいいので、「雨が降るしくみ」や「雲」について知らなくても、日常の生活は困りません。
これらの例から言えること
私たちはしくみを気にしないで生活できています。
以前は、うまく動かなかったら、なぜそうなるのか考えて対処する必要がありました。
身の回りの製品が便利になって、これまで私たちがしてきたこと、考えてきたことをしなくても日々の生活を送れるようになりました。
身の回りの製品が便利になるということは、高機能になることで、製品のしくみが複雑になっています。
従来であれば、うまく機能しなければ「修理」や「調整」であったものが、今では、製品そのものの「交換」で対応するしかありません。
結局、しくみを勉強する必要性などなくなっています。
勉強内容が細分化されたために、自分の生活との関係がわからない。
そもそも、学校の勉強内容は、生活で必要である知識・技術の核となる部分を効率よく組み立てたものです。
基本的には、生活と勉強内容とはつながっています。
でも、勉強内容が細分化されていたために、部分を勉強したとき、全体との結びつきがわからなくなりました。
なぜでしょうか?
例えば、私たちは電気を使って生活しています。
その電気を使った生活を、学校では次のように細分化し学習します。
小学校4年 電気の働き(・乾電池のつなぎ方、・光電池の働き)
小学校5年 電流の働き(・鉄心の磁化、極の変化、・電磁石の働き)
小学校6年 電気の利用(・発電・作電、・電気の変換、・電気による発熱、・電気の利用)
中学校2年 電流、電流と磁界
中学校3年 エネルギー
このように、全体を通してみればわかりますが、授業である部分だけを見た子供は、学習内容が生活とどうつながっているのか分かりようがありません。
そうなれば、目の前の学習が自分にとってどんな関係があるのか分からなくなり、学習に興味を失ってしまいます。
コロナ禍の中、家庭でも「学校の勉強が自分に関係ない」と思わせない工夫が必要です。
今回は、子どもが勉強に取り組まない理由について、
皆さんと一緒に考えてきました。
最初に、自分にメリットがあると感じると、子どもはやる気になることを確認しました。
そのうえで、「なぜ、子どもたちが学校の勉強が自分に関係ない。」と思うのかその理由を考えました。
そして、次の3つの理由についてお話ししました。
理由1:自分の将来がどんな社会かイメージできない。
理由2:計算、測る、考えるなどの基本的なことをしなくても、日々の生活ができる。
理由3:自分の生活と勉強内容の関係がわからない。
私の意見をどう感じたでしょうか?
実際、私が勤務した高校や中高一貫教育校では、
「子どもが、学校の勉強が自分に関係ない」と思わないように、
多くの教師がさまざまな工夫をしているのを見てきました。
現在、コロナ禍のために学校で教師ができることが限られています。
家庭でも、「子どもが、学校の勉強が自分に関係ない」と思わせない工夫が必要になっています。
次回以降は、私がこれまでやってきた具体的な内容についてお話しします。
最後までありがとうございました。
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